top of page

企画に際して

 

 現在、先進国では医療へのアクセスが容易ですが、途上国では医療を受ける体制すら整っておらず、医療支援が届かない地域も存在します。これは世界が一丸となって対策をとるべき、見過ごせない状況です。国際連合は2000年にミレニアム開発目標(MDGs)を採択し、2015年までの保健分野の目標として乳幼児死亡率の削減、妊産婦の健康の改善、エイズ、マラリア、その他の疾病の蔓延の防止を掲げました。その後、WHOとUNICEFが主体となった医療支援が行われ、現在では、国連やNGO/NPO、民間企業等も独自の立場から医療支援を行っています。実際に、世界の国際保健分野での援助額は過去10年で倍以上に増加しています。医療支援の分野は多岐にわたりますが、最も効果的かつ費用対効果の優れた疾病予防対策のひとつとして予防接種の普及が行われてきました。

 

 しかし、従来の支援は、効率的に目標を達成することを求めたあまりに、平均値が重視され格差や不平等さが生じてしまっていると指摘されています。事実、予防接種を受けられない子供はアフリカや東南アジアなどの医療においての発展途上国に集中しており、その占める割合は、全世界の60%と言われています。WHOの推計によると、現在、予防接種を受けられない子どもは2180万人おり、ワクチンで予防可能な疾患のために命を落としている子どもは年間210万人(うち5歳未満では174万人)とされています。ナイジェリアやパキスタンをはじめとした医療においての発展途上国において年間120万人の子供が亡くなっていることとなります。これは由々しき事態であり、早急な対策が必要であると言えるのではないでしょうか。

 

 こうした現状を踏まえ、WHOとUNICEFは2015年以降の目標としてUniversal Health Coverageすなわち、すべての人が必要な時に負担可能な費用で基礎的な保健医療サービスを受けられる状態の達成を掲げました。全ての人が医療を受けるには、これまで行われていた地域での医療支援を続けるのみならず、支援の進んでいない地域にも目を向け、地域間格差、国家間格差および国内格差を解消することが課題であるとされました。そのためには、それぞれの地域の文化に合った人々のニーズに基づく支援を行い、最終的には地域の住民らが主体となって医療を行えるための支援が必要です。予防接種においては誰もが疾病予防の必要性を認識し、ワクチンを接種できるように普及を支援することが必要です。

 

 しかし、日本にいる私たちは、自分が生きている今この瞬間でも何千万人という人が疾病で苦しんでいるという事実を忘れがちです。。現在の支援の実情を知り、支援の在り方を考え、実践していくことが、医療不足で苦しむ人々のための一番の支援となるのではないでしょうか。参加者が世界での医療の現状を真摯に受け止め、自分の国際保健への関わり方を今一度考え、世界へ踏み出すための契機とすることを願い、本企画を開催する運びとなりました。

(企画担当者より)

bottom of page